京大北欧研究会

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ヘルシンキ大学(フィンランド)留学経験者インタビュー

お久しぶりです!だいぶ更新が滞ってしまいました……すみません(~_~;)

京大は夏休みに入りました。今夏は北欧研究会から3人のメンバーが、スウェーデンフィンランドへ旅立ちます✈️

 

今回から複数回にわたって、北欧に留学経験のあるメンバーへのインタビューをお届けします!

記念すべき1人目は、フィンランド留学経験者のSさん(人間環境学研究科修士2年)です☆

 

 

留学前

——留学先の大学、期間、分野について教えてください。

 フィンランドヘルシンキ大学に、1年間、交換留学制度を利用して留学しました。分野は社会科学、特にソーシャルリサーチです。京大からフィンランドに1年間留学する場合は、8月出発で、授業は9月初週から5月末までです。

——留学先と分野について伺います。どのように、どちらを先に決めたんですか?

 1回生後期に一般教養として、落合恵美子先生のジェンダー論の講義を受けて、ジェンダーに興味を持ちました。落合先生の授業では英語の資料が多く使われていて、なんかかっこいい〜♪と思っていました。授業中、先生が「英語でアカデミックなことを議論できるようにならないといけない。特にジェンダーは、日本では全然進んでいないから、もっと海外の視点を得ないといけない」とおっしゃっていて、それをきっかけに留学について考えるようになりました。

——「英語で議論できないと」と言われても、なんとなく受け流す人も多いと思います。でもそこで真剣に留学を考えるようになったのには、何か理由があったんですか?

 そうですね……入学当初から、自分が期待していたように大学の勉強ができていない感じはしていました。1回生なので一般教養ばかりだったのもありますが…。私の友人の間では楽単と言われている授業を取る風習がありました。動機はともあれ授業自体はどれも面白かったのですが、「もっと勉強するはずだったのに。なんで大学にいるんだろう」と感じていました。私は神戸から通っていたので、学業へのモチベーションが下がると大学に行くのがどうしても億劫になってしまうんですよね。そんな時にジェンダー論と出会って、これについてもっと勉強してみたいと思いましたし、ジェンダーを勉強しているときは、自分勉強してる!と思えました。もともと海外に関心があり、漠然と行きたいと思っていましたが、お金がないからと諦めていました。でもジェンダー論の授業をきっかけに、一度ちゃんと調べてみようと思って、京大の留学制度を調べ始めました。留学したい気持ちをより加速させ、現実的にしてくれたのが、ジェンダー論だったと思います。

 最初は英語圏への留学を考えていたのですが、別の大学に通う友人がたまたまフィンランドに留学していて、インスタでフィンランドの景色などを見ているうちに、いわゆる王道な留学先よりもフィンランドに留学したいなと思い始めました。ジェンダーを学ぶという観点からも、北欧はいい留学先だと思います。フィンランドの交換留学提携校がヘルシンキ大学しかなかったので、必然的にヘルシンキ大学になりました。現地での学部については、ジェンダーを学べそうなのがリベラルアーツとソーシャルサイエンスだったので、京大では総合人間学部の人間科学科(社会科学を主に扱う)に所属していたことから、ソーシャルサイエンスに決めました。学部の決め方は割と適当でしたが、HPを見て良さそうだと確信しました。

 

——学習面、つまり語学や専門分野については、留学前にどんな準備をしましたか?

 留学したいことを2回生の春に学部の事務の方に相談したのですが、ほとんど勉強せずにIELTSを受けて、その時のスコアは5.5でした。交換留学の推薦は得られるものの、行きたい大学となると6.0以上のスコアが必要だったので、もう半年準備して秋にスコアを提出することにしました。事務の方に相談したところ、英語が不安なら京大に来る留学生のチューター*1をやってみないかとお誘いを受けて、2回生後期からチューター業務に携わりました。チューターの仕事を通じて海外の人と話すハードルを下げるとともに、自分の英語ってちゃんと伝わるんだと実感することができました。京大にはE科目といって英語で(ある分野を、または英語を)学ぶ授業があるのですが、それを調べて、最初は難しいと思った授業にも挑戦しました。特にE3科目(英語でのディスカッションやプレゼンなどを学ぶ授業)はモチベーションの高い学生が集まっているので、積極的に発言しても変に思われないのがよかったです。間違った英語でもとにかく喋って、あとで間違っている部分を調べて間違っていたことを確認し、恥ずかしくなる…ということの繰り返しです。今でも、そのとき間違った場面と語彙が鮮明に思い出せます。スピーキングについては、果敢にチャレンジすることで培われました。

 ジェンダーの勉強に関しては残念ながらあまりやっておらず、今でも後悔しています。学部の先輩に聞いたり本を読んだりして、日本の研究の主流、さらにいえばヨーロッパの研究の主流も知っておけばよかったです。フィンランドに行ってから現地の学生が持っている前提知識を知る感じだったので…。日本でも海外でも、どのようなアカデミックなベースを持って議論がなされているのかを知ることは、本当に重要だと思います。

——学部の事務の方など、多方面に繋がりがあったんですね。

 総合人間学部の事務の方は本当に優しいので、留学については色々相談に行きました。色々な人と話して繋がりを持つのは大事で、国際交流科にもこまめに足を運びました。

 また、クラシス(京大関係者のみアクセス可)には色々な国際交流プログラムが載っています。日本でできる国際交流も実はたくさんあるので、留学の前にそのような交流プログラムに参加するのもいいかもしれません。コロナのせいで先行きが不透明な状況が続いていますが、留学に行けないから何もできないと諦めるのではなく、国内でもできることを、ぜひ探してほしいと思います。

 

——生活面での準備について、持っていってよかったものがあれば教えてください。

 うーん、正直ないですかね、大抵のものが向こうにあるので……手ぶらでも困らないんじゃないかとすら思います。強いて言えば、水の違いで髪がパサついていた友人はいました。シャンプーやスキンケアは日本の馴染みのものを持っていったほうがいいと思います。ただ、水が硬水なので、同じ製品でも日本で使うのとは塩梅が違うかもしれません。私の場合は乾燥がひどくて、ほっぺがカサカサして何を塗っても痛いような状態になりました。敏感肌の人は日本でお手軽なスキンケア用品を買い込んでおいたほうが、フィンランドで買うよりは安くすむと思います。とはいえ薬局も、相談すればすぐに色々と薬を出してくれます。私は薬関係はあまり使いませんでしたが、フィンランドの医薬品が危険なものとも思えないので、あまり心配する必要はないと思います。

 服に関しては、セカンドハンドストアのセールを活用するのがおすすめです!セールの時は4着5ユーロくらいになるので、暖かい服を買って冬を過ごして、春になったら道端の至る所に設置されている服のリサイクルボックスに入れます。荷物も減るので一石二鳥です!

 

留学中✈️🇫🇮

——次に、留学中について伺います。ヘルシンキ大学の授業はどんな感じでしたか?

 ヘルシンキ大学の1年は大きく分けて秋学期と春学期に分かれていて、さらにそれぞれが2つに分かれているので、全部で4タームからなっています。1タームに2〜3つ授業を取るので、1学期に4〜6つ授業を取ることになります。日本の学部生でいうと3〜4回生くらいの、かなり余裕のあるスケジュールです。詰め込みではなく学生の自主性を伸ばす、というフィンランドの教育方針が現れていますよね。1つの授業で週2コマある授業もあり、1コマは講義、もう1コマはディスカッション、という感じで進める先生もいます。予習として本や論文を読んで、授業ではそれをもとにディスカッションするスタイルが多かったです。とにかくディスカッションが多くて、1コマ90分のうち前半45分が講義、後半45分がディスカッションという授業もありました。最初はすごく緊張しましたが、案外乗り切れました。授業という点では京大との違いはここにあると思います。すぐそばの学生と4人組になって話したり、グループ発表の機会も多いです。授業が終わってからみんなで学食にご飯を食べに行って、どんな発表にするか話し合ったり…。日本の大学では、授業後に勉強のことについて学食で語る、なんてことはないので(少なくとも私はなかったので)新鮮でした。周りの学生も私が留学生であることを知っているので、アジアや日本との違いを興味深く聞いてもらえましたし、発表でもその視点から話すことがありました。

 最終的な成績評価はレポートや発表です。私の場合は試験はありませんでしたが、試験がある授業をとっている友人もいました。試験の形式は、指定された1週間くらいの期間内にパソコンルームに各自で行って、試験を受ける形式です。事前に2冊程度本を読んで、その中から出題されるようです。

 またフィンランドには、いわゆる普通の授業(対面授業とレポート課題)とは違って、オンラインの授業もあります。授業はなくて、課題図書を読んで最終課題を提出すれば単位がくる授業です。

——授業で大変だったことはなんですか?

 アカデミックライティングの形式に則って英語でレポートを書くのが大変でした。これは本当に伝えたいのですが、アカデミックライティングのテキストは日本に山ほどあるので、絶対に日本で手に入れて、自分で何回か練習してみたほうがいいです!そして、大学図書館の学習サポートデスクなども活用して、英語ができる人に自分が書いたものを読んでもらうのがいいと思います。フィンランドに行って初めてのレポート、おまけにアカデミックライティングも初めて、となると、相当しんどいです。構成もわからないし、何が普通なのかもわからないので…。私は運よく香港出身の友達ができて、その人は日本と香港のハーフで香港のインターナショナルスクールに行っていたので、アカデミックな思考は基本的に英語でしているという人でした。日本語もわかるので、自分の書いたレポートを読んでもらって、色々とアドバイスをもらいました。ここは何が言いたいの、英語になってない、などコテンパンにされつつ、それをもとに必死に直して、なんとかレポートを書きました。本当に大変でした…。分量はそれほど多くはなく、2000~3000wordsくらい(日本語に換算すると2000wordsで約4000字)でした。

——アカデミックライティングの授業は京大でも1回生の必修科目(外国語に英語を選択した場合)としてありますが、やはりそれだけでは足りないものなんですね。

 もちろん形式として知ってはいましたが、それに則っていくつも段落を重ね、一つのレポートとしてまとめあげるのはすごく難しかったです。あまり細かく添削してくれる先生ではなかったのと、私自身もアカデミックライティングの重要性を理解しないままただ単位を取ることを考えていたので、必修の授業だけだと足りないと思います。1回生だとアカデミックライティングの重要性に気づける人は少ないと思うので、2回生以降でも全学共通科目のE科目を探して履修した方がいいと思います。私自身は、E科目のカナダ人の先生に自分が書いた英語のライティングを添削してもらったこともありました。ただ、バイトもある中でできる限り練習した程度なので、日本にいる間から(留学のためのお金を)節約して、勉強にさける時間を多く作り、英語ネイティブの先生とのコミュニケーションを通じてアカデミックライティングの基礎を培っていくのが大切だと思います。

——授業ではディスカッションが多いとのことですが、非英語ネイティブの留学生にとっては、なかなか大変そうですね…。英語に限らず、留学生へのサポートなどはありましたか?

 授業の成績評価について「ディスカッションへの貢献度で評価する」と言った先生*2に対して、ある学生が「非英語ネイティブの学生に不公平なのではないか、頭の中ではもっと色々な考えを持っているかもしれないのに」と異議を唱える場面に出くわしたことがあります。それに対して先生は、ちょっと考えておく、というようなことを言っていた覚えがあります。指摘されたことに対してそれを素直に受け入れる雰囲気があるのは、とても素敵だと思いました。私自身はスピーキングが得意な方でしたが、ネイティブの英語ではなくてもちゃんと話を聞いてもらえます。英語が不得意だからといって排除するような雰囲気は全くなく、ディスカッションでも話を振ってくれたり、みんなの意見を聞こうとする雰囲気がありました。

 学部の雰囲気にもよりますが、社会科学部の学生は留学生への配慮がある人が多かったように感じます。フェミニズム的な視点を擁している人が多い印象です。自己紹介の時にHeかSheのどちらで呼んでほしいか聞かれたこともあります。他の学部の友人にこのことを話すとそれはなかったと言われたので、フィンランド全体に当てはまることではないようですが、特に社会科学部の学生は寛容な人が多かったです。(留学前の学習面についての話で京大のチューター制度について触れましたが)ヘルシンキ大学にも留学生のためのチューター制度があって、これも留学にヘルシンキ大学を勧める理由の一つです。ヘルシンキについてすぐ、留学生8人+フィンランド人学生2人という感じでグループ分けがされました。そのメンバーで、授業が始まる1〜2週間前に、チューターが企画したピクニックなどのお出かけに連れて行ってくれました。おかげで授業が始まる前に友人ができて、どの授業を取るか相談するなど、スタートダッシュがすごくうまくいきました。

——単位はどのくらい取れましたか?

 単位として取ったのは8コマ分くらいでした。半期で6コマしか取れないうえ、新型コロナのせいで4ターム目が全部オンラインになって、気持ちがあまりのらず…。先生によっては、毎週プリントだけ渡すのでそれを読んで勝手にレポート書く、という型式もありました。取った授業は、スウェーデン語、政治学ジェンダー学、移民学、高齢化社会の研究(統計資料を読み、高齢者というライフステージにおけるウェルビーイングをどのように追求するか考える)などなど。総合人間学部人間科学学科の主専攻として認定された授業は3つで、社会学理論(1単位)、移民社会学(2単位)、Aging Society Ⅱ(2単位)、ですね。単位の交換については、文科省が定めた日本の大学の授業時間(半期で14回、1回90分)を満たせば2単位、という感じだったと思います。単位交換に当たっては授業時間を詳しく書いて、それを指導教員に提出し、教授会で承認されると単位になります。単位申請に関してですが、あとは書きようで、その授業が主専攻に関係することをアピールするのが大事です。私は主専攻と自由科目(どちらも総合人間学部における要卒単位の区分)として認めてもらえました。歴史政治学とNordic Welfare Stateは自由科目として認定されました。フィンランド語も取ったのですが、単位が足りていたので、単位交換はしていません。実はこの単位申請がすごく大変で、英語のシラバスを日本語訳して事務の方に提出しないといけないんです。主専攻の単位が足りなかったのでその分は頑張って申請したのですが、申請するかしないかは自由で、単位が足りていたら申請しなくてもOKです。

——留学中に取れた単位って、かなり少ないですよね…?

 京大の感覚でいうと少ないですね。単位交換しなくても足りた理由は、フィンランドにいながら京大の授業も受けていたことが関係しているかもしれません。本当なら5月末までフィンランドにいて後期から京大に復学する予定でしたが、コロナのせいでフィンランドで思うように授業が取れない中、ちょうど京大も全面オンラインになったので、ヘルシンキ大の授業と同時に京大の授業も5コマくらい取っていました。時差があるので、朝4時半から授業!という感じでしたが。

 

——留学中の生活面について伺います。住まいはどんな感じでしたか?

 ヘルシンキ大学が契約している不動産会社を介して、6人部屋のフラットに住んでいました。ヘルシンキ大学に留学するヨーロッパ出身者は半年間の留学が多く、1年いるとなると、遠くから来たアジア出身者が多くなります。私は1年間フィンランドにいたので、ルームメイト6人中5人が日本人、1人が中国人でした。こんなに日本人がいるのかと驚きましたね。ルームメイトの中には醤油や味噌を持ってきている人がいたので、日本食を料理して食べることもありました。ホームシックにはならなかったです。

——北欧といえば物価が高いイメージが強いですが、どうでしたか?

 フィンランドで普通に暮らしていて、食費がすごく高い、というようなことはないですね。さっきもお話ししたように、化粧品は高いですが、スーパーに売っているものがすごく高いかというとそんなことはないと思います。日本の方が野菜や果物は高いと感じました。フィンランドの住宅には大きなオーブンが必ずあるので、小麦粉を買ってパンを焼くこともありました。パンを買ったとしても、基本的には安いです。パンにチーズ、きゅうり、トマトを挟んだサンドイッチはフィンランドの朝食の定番です。特別、節約しなきゃ!、と思ったことはないですね。

 外食について、カフェは高いですが、ランチなら1500〜2000円くらいなので、日本にもある価格帯だと思います。私自身はあまり外食をしなかったのですが、外食が高いと言われる理由は2つある気がします。1つ目は酒税が高いことです。缶ビールが350円くらいするので、外でお酒を飲むと高くつきます。2つ目は、安く楽しめる居酒屋やレストランが日本にたくさんあるので、比較してしまっていることだと思います。フィンランドのレストランは気軽に行くような雰囲気ではなく、パーティーっぽいというか、フォーマルなところが多いです。あと、フィンランドの学生はホームパーティーをよくします。外食が高いから自炊しなきゃ、ということではなく、みんな自炊しているので家で作って食べるのが普通、という感覚でした。どうしても作りたくない日があっても、スーパーにはレンジで温めて食べられるスープなどがそれほど高くない値段で売っているので、食費についてはそこまで心配しなくて大丈夫だと思います。

——留学中に起こったハプニングがあれば教えてください。

 交換留学なので、住まいと学業に関しては、ハプニングが起こらないように手配されていました。旅行中にはありましたが、大学では特にないか、覚えていないか…という感じです。周りには私費でフィンランドに来ている人やインターンのために来た人もいましたが、彼らは自分で家探しをしないといけないので、大家さんとトラブルになった話を聞いたことがあります。「フライパンが汚れている。あなたはよくキッチンを使っていたからあなたが汚したんでしょう」と言いがかりをつけられ、汚したのが自分ではないことを証明することもできず、お金を取られたそうです。交換留学のいいところは、学生がお互いの大学の提携で守られているところですね。大きなトラブルがあれば日本で在籍している大学に助けを求めることもできるので、安心です。

——留学中の旅行は、どこに行ったんですか?

 土日だけデンマークに行ったり、船でエストニアに行ったり、夏休みを利用してイギリスに行ったりしました。社会科学部の学生団体が斡旋する旅行プランで、ストックホルムまで2000円で往復できたこともあります。日本人の学生は旅行に行くために食費を節約してお金を貯めている印象でした。シェンゲン協定のおかげでパスポートを見せることなく(携帯はしていますが)国境を越えられるので、楽に旅行できます。ただ、フィンランドはヨーロッパ諸国とのアクセスが良くないので、飛行機代は高かったです。本格的にヨーロッパを周遊したいのであれば、留学先としてフィンランドを選ぶのはおすすめしないです。

 

留学後

——次に、帰国後について伺います。京大に戻ってきて、どうでしたか?

 コロナ禍だったのと、卒論を書かないといけなかったので、京大のキャンパスに来ることがそもそもありませんでした。帰ったらすぐにバイトを探して、バイトで生計を立てながら卒論の準備をしました。帰ってきて感じたことといえば、閑散としていたので、(コロナで)世界が変わったな〜と思うくらいでした。案外1年は短いので、感慨に浸るわけでもなく、淡々と進んでいきましたね。

——帰国後、留学経験をどのように生かしましたか?

 留学経験は就活に生かすことができます。3回生のとき、ボストンキャリアフォーラムという就活イベントに参加しました。日本語と英語ができて、海外留学/在住経験があることが条件*3なのですが、アメリカ・ボストンのものすごく大きな会場で企業との面接が行われて、その場で内定がもらえます。私のときは現地で開催されたので、3回生の10月に3〜4日だけ授業を休んで、ヘルシンキからボストンに行きました。友人が参加すると言っていたので、軽い気持ちで同行しました。私の中ではなんとなく院進も考えていて、でも就活するとなると日本に帰ってから何をすればいいんだろう…という感じで、あまり就活については準備していませんでした。多分、心の中では大学院に行きたかったんだと思います。ボスキャリではその場で3社内定、東京で最終面接を受けて1社内定をもらい、内定をもらった4社全てが日系企業でした。ボスキャリに参加している外資系企業は英語ネイティブの日本人を求めているようだったので、交換留学を経験したくらいの学生の受け皿は日系企業に多かった印象です。留学経験があることで、それがない学生とは別の就活ルートを使えるということは、就活において大きなアドバンテージだと思います。日本の企業には留学経験のない社員の方も多いので、留学について興味深く話を聞いてもらえました。留学を通じて何を得られたか、はっきり言語化できていなかったのですが、面接などで他の人から改めて質問されたことで、振り返るきっかけになりました。フィンランドに行った、というのも、覚えてもらいやすかったです。アメリカやイギリスなどメジャーな留学先に行ったことがある人は多くいますが、フィンランド留学は珍しいので、話が弾みました。学部提携校を利用しないといけないような国の大学に留学してみるのは、面白い経験になると思います。

 また、私は現在大学図書館の学習サポートデスクのスタッフとして働いているのですが、それには日英が話せることが必要条件です。自分が留学に関して受けたサポートを生かし、今度はサポートする側に回っています。

——院進の話が出ましたが、院試の勉強はいつ進めたんですか?

 7月1日に帰国したのですが、院試は8月だったので、帰ってすぐに院試の勉強をしました。7月中は卒論の構成を考えたり、京大で前期に受けた授業のレポートを書いたり、院試を受けるにあたって読んでおくべき基本的な文献を担当教員から教えてもらってそれをひたすら読んだりしていました。学部では人間科学科という社会科学関連の学科にいましたが、自分が学びたいことを掘り下げて考えていくうちに、自分がやりたいことは政治学に寄っていることに気付きました。学部時代の指導教員は退官することが決まっていたので、大学院からは別の先生に、メールやZoomで進学したい旨を相談したうえで院試を受けました。かなり忙しかったですが、留学から帰ってきて頑張りたいことも明確でしたし、フィンランドに留学したことも自信になって帰国後も向学心に満ちていたので、そんなに苦しくはなかったです。

 

——最後に、留学を考えている人にメッセージをお願いします。

 準備している今はとにかく不安で、色んな人に質問したくなると思います。何をしたらいいのか、自分がやっていることはあっているのか、英語のホームページを読む中で本当に全部読めているのか…とか。不安なことはたくさんあると思いますが、時間をかけて、きちんと準備すれば、怖いことはないです。京大の事務や国際科の方に頼りつつも、自分で責任を持って進めれば大丈夫です。私は出発前日になって「毎日やってきたことが現実になるんだ……明日行くんだ!!」という気持ちになりました。人に頼ってもいいし、頼らなくてもなんとかなります。行く前から、人に聞いた情報で留学中のことを決めすぎることなく、(もちろん情報を集めるのは大事ですが)現地に行って得られる自分にしかない経験を楽しみに、準備を進めればいいのではないかと思います。

 

 

以上、ヘルシンキ大学留学経験者・Sさんのインタビューでした!

留学を考えている方はもちろんのこと、今のところ留学予定のないブログ担当者にとっても、とても勉強になるインタビューでした。

留学することは多くの人にとって、大学生活の中でも有数の大きなイベントだと思います。「人は不安より不満を選ぶ」というフレーズを何かで聞いた覚えがありますが、留学という選択は大きな不安を伴うものの、不満な状態に甘んじないための、一つの選択肢だと感じました。

また、インタビューではおっしゃっていませんでしたが、Sさんは自身の研究内容に関連して「フェミニズム研究会」(京大の学生が、フェミニズムジェンダー・移民などについて英語論文や日本語文献を読み、ディスカッションする場)を発足されています。私も北研とフェミニズム研のメンバーなのですが、毎週、約10人のメンバーからたくさんの刺激を受けています!

 

大北欧研究会にはSさんのような北欧留学経験者や、北欧に留学予定のメンバーが複数在籍しています。特に北欧留学を考えている方にとって、不安な留学準備の伴走者となる仲間ができると思います♪

気になった方はTwitterのDMなどからご連絡ください!

 

 

最後までお読みいただきありがとうございました。

次回以降も留学経験者や北欧からの留学生へのインタビューをお届けする予定です!

乞うご期待ください☆

 

*1:補足:ここでいう留学生のチューターは大々的に募集しているものではなく、事務の方から直接依頼されるもの。Sさんの場合4人の留学生を担当し、日本語のレポートの添削をしたり、区役所の手続きに同行したり、ESSで日本人学生との繋がりを作ったりなど、幅広く留学生をサポートする。

*2:これを言ったのはPDの先生でした。フィンランドでは博士課程に進学するとTAをやったり授業を受け持ったりすることになっていて、給料をもらいながら研究します。

*3:ボストンキャリアフォーラムについての詳しい情報は公式サイトをご確認ください。https://careerforum.net/ja/event/bos/